混沌の芸術家、GOMESSというラッパーについて

入門シリーズ

目次

ポエトリーラッパーとして活躍し、自閉症と共に生きるラッパーGOMESS。

なぜだか彼の日本語からは不思議な言葉が宿り、胸にスッと言葉が落ちてくるような。そんな感覚に陥るのです。

GOMESSの魂から削り取られたピースを繋ぎ合わせた言葉の芸術、HIP HOPを、GOMESSから僕達の鼓膜を通して僕達の魂へ届くのです。

自閉症と言うのは、GOMESSにとってはあくまで事象の一つに過ぎません。GOMESSの音楽を聴くときはそんな色眼鏡なんかなしで聴いてほしいと思い今回記事にしました。

今回は彼の人生を少しだけ、覗かせてもらいましょう。

小学4年生で診断される、自閉症

GOMESSさんといえば、自閉症を抱えていることが世に知られています。恐らく自閉症スペクトラムの一つ、ディスレクシアと呼ばれるもので、文章を読むことができません。そのため、リリックを覚えることに大変苦労しているそうです。その中でも、後述する「Poetry」という曲のリリックはライブの度に少しずつ異なり、ほぼフリースタイルでライブしているのです。その日の詩はその日しか唄わない。僕は、ここに瞬間の美学というものを感じてしまうのです。それもGOMESSの魅力の一つ。

とはいえ、小学生時代のテストでは100点か99点しか取ったことがなかったそう。聞くことで学習できるという彼はずば抜けて頭がいいのでしょう。それは彼のリリックからも読み取ることができますね。「99点は0点と同じ」と語る彼は恐ろしいほどの完璧主義者で、まさに孤高のアーティスト。

人生を変えた音楽、HIP HOP

診断が下った後、小学5年生の春からGOMESSさんは人の視線が気になって、外を歩いている人と自分を比較しては自己嫌悪に陥り、引きこもることになります。

その頃に出会ったのが音楽。その頃から現在まで彼が愛聴しているのがゲーム音楽でした。最初の出会いは、「トルネコの大冒険」のサウンドトラック。そこから音楽にのめり込むようになって、この頃から見様見真似で作曲をしていました。

その後、中学校になってもなかなか学校へ行けずにいたGOMESSですが、HIP HOPと出会ったのもこの時期。それがRHYMESTERでした。ここから、GOMESSのHIPHOP人生がスタートすることになります。

第二回高校生ラップ選手権準優勝

HIPHOPにハマっていったGOMESSは、mixiのコミュニティでの繋がりからネットラッパーの人たちとサイファーをすることに。

そこで出会った繋がりから広島でとあるイベントに招待されます。これがGOMESSの人生初ステージでした。しかし、結果は緊張で歌詞を飛ばしてしまい悔しい思いをすることに。「Yo!」しか言えずにブーイングをもらうという経験をしたGOMESS。

そんな経験の中、ZEEBRAの武道館ライブDVDを見て衝撃を受けます。16小節丸々歌詞を飛ばすもフリースタイルで場を盛り上げるというシーンに食らってしまったGOMESSは、フリースタイルの腕を磨くようになります。

その後、出場を決意した高校生ラップ選手権では予選を次々に勝ち抜き、準優勝という結果を残します。

私も当時の放送を見てましたが、間違いなくこの時の第二回大会はGOMESSが一番輝いて見えました。本来は第一回大会で受かっていましたが諸事情により次回に見送ることに。個人的には、これがすごい良かったと思います。なにせ第一回はメンツが濃すぎますもんね。

GOMESS的には優勝できなかったことが恥ずかしかったと語っていましたが、ここで名前が一気に広まったことで、インディーズレーベルの「LOW HIGH WHO?」の社長からから声がかかり所属するとことになります。

アーティストとしての活動は、ここから始まりました。

絶対に知っておいてほしい、GOMESSの楽曲

人間失格

GOMESSの代表曲です。

自らの人生、自閉症との向き合い方をrapで表現しています。率直にこのリリックは、地獄を見た人にしか描けないなって。

”張り切って受けた 数々の診断テスト

オレに一生の誓いを乞う まさかのプロポーズ”

このリリックは、自閉症と診断されたときの場面です。一生付き合っていくものだから。ハッとさせられませんか?

LIFE

とんでもないエネルギーを帯びた曲です。

もう一人の自分。それは、解離性同一同一性障害により発現しているもう一人の人格のGOMESSのことです。心が締め付けられます。共感だなんてそんな軽い言葉では表現しきれないけど、とにかく心で感じてください。

GOMESSが、自分の曲で一番リアルだと語る この曲は、liveではフリースタイルでしか演らないと決めている曲の一つです。

まさに、瞬間の美学。同じ曲はこの世に2つとして存在しない。どこにでもあるフリースタイルとは違う、究極の芸術の形だと僕は思います。

LIVEパフォーマンスはこちら

Poetry

同じLOW HIGH WHO?所属のアーティスト、不可思議/wonderboy「Pellicule」をサンプリングしつつ、「生きる」ということをテーマにした曲だと私は解釈しています。リリックの「お前」には不慮の事故で亡くなってしまった彼のことも含まれると思いますが、不可思議/wonderboyだけに限定されていないと思います。なんというか、忘れていた当たり前を思い出さてくれるのです。

誰しも、生きてることの素晴らしさをありがたく思う瞬間て誰にでもあると思うんです。でもその感情って、結局そのときだけ。明日には忘れてる。

なんかグサッときませんか?そういう人間的な弱さを唄ってくれるGOMESS、最高なんですよ。

LIVEパフォーマンスはこちら!

FREE STYLEで魅せるGOMESS

GOMESSの真髄は、フリースタイルにこそ宿っていると私は思います。発声、言葉選びの一つ一つに生の挙動を感じ、人生の本質を捉えている。生きるとは何か。気が遠くなるほどの自問自答を繰り返し、もがき進み続けても明けない闇の中を彷徨い続けたGOMESSの魂を削って出したものを言葉として表現しているのです。どのスリースタイルも魂を揺さぶられます。その音楽性、フリースタイルのうまさはあの呂布カルマも太鼓判を押しています。心して聴いてください

2015.8.5 広島平和記念公園

2017.9.4 下北沢THREE

2018.8.5 広島平和記念公園

バトルでのGOMESS

Screenshot

最後に、バトルでのGOMESSを紹介させてください。GOMESSはデビュー後からバトルシーンでも活躍し、戦極MC BATTLEADRENALIN凱旋 MC BATTLEなどの大きな大会にも数多く出場しています。

中でも選りすぐりのバトルを選んでみましたのでまだ見たことない方はぜひご覧ください!

 VS ID

このバトルに、私は未だ心を掴まれたままなんですよね。特にGOMESSの最後のバース、これはHIPHOP史に残るパンチラインと言っても過言ではないのではないのでしょうか。あえて文字起こしはしません。言葉の衝撃を耳から感じてください

VS RAWAXXX

若手は完膚無きまでに叩きのめすMOL53が、べた褒めして自ら負けに行く珍しい試合です。GOMESSの評価がよくわかります。GOMESSの2バース目、これはまた最高のパンチラインです。

VS MC☆ニガリa.k.a赤い稲妻 

実はこの2人、高校生ラップ選手権後に意気投合して一緒に暮らしていたほどの仲でした。いざこざがあってその後は距離があった2人ですが久しぶりの対戦で胸が熱くなるカードですよね。当時よりスキルが上がった2人のバトルは必見です。

VS Scooby J×ふぁんく×K-razy

圧巻のアカペラ。思想のラップが光ります。息が詰まるような45秒間は未だかつて体験したことのない未知の領域へ貴方を誘います

GOMESSのあとふぁんくから「宗教か?」とつつかれますがそれでいいと思います。HIPHOPに限らず音楽、ひいては芸術と言うのは宗教と本質的に似通っており、自我の強調がテーマですからね。

最後に、GOMESSさんへ

GOMESSさんへ、この記事が届いているかどうかはわからないけどあなたの芸術は私の人生の財産になっています。

GOMESSさん、貴方は芸術家として生きて、芸術家として最期を迎えてください。

ラッパーとして、言葉をビートに乗せて、発信し続けてください。もっともっと貴方の言葉を享受していたい。そう思っています。

いつかカフェ、オープンできるといいですね。

応援してます。

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