超わかりやすい日本のHIPHOPの歴史、これだけは絶対に聴いてほしいクラシックOF日本語ラップ

入門シリーズ

目次

超絶ざっくり!日本におけるHIP HOPの歴史

近年急激に成長し、10代の音楽シーンにも食い込んでくるほどに盛り上がりを見せるジャンルのHIP HOP。ですが、日本におけるHIPHOPの歴史のざっくりとした流れをご存知でしょうか?もともとHIPHOPとは、アメリカの低所得者層のアンダーグラウンドな音楽として勃興し、そこから徐々に市民権を経てメジャーな音楽へと進化を遂げます。しかし、日本でのHIPHOPの広がりはその逆だったんですね。いとうせいこうTINNIE PUNXを始めとしたメジャー音楽シーンで徐々に「ラップパート」が取り入れられ、「ラップ」と言うものが広まります。

そして大まかに、メジャーハードコアとで2つに分断されました。

スチャダラパーのように、今までのあくまで日本語の響きと流れを意識したラップを継承していったメジャー派キングギドラBUDDHA BRANDと言った海外の最新のフローや尖ったリリックのHIPHOPを輸入し、「いやいや本来のHIPHOPってこうでしょ」という風潮からアンダーグラウンドな音楽として定着していったハードコア派に別れました。そして今流行っているHIPHOPというのはハードコア派の流れを汲んだものであり、悪と正義がひっくり返ったかのような構図になった、という背景があります。

HIPHOPは不良の音楽なの?

答えは、どちらともいえないです。

確かにイメージ的には不良達がクラブで騒いでるイメージがありますが、それが全てではないです。

現役の裏社会の方ももちろん活躍されていたり、大卒で真面目にラップしている人もいる。

HIP HOPと言うのはステージ上だけではなくて路上に転がっていることだってもちろんあるんです。不良だろうが優等生だろうが、かっこよくかませていれば正解という非常に受け皿が広い、寛容な音楽としての一面もあると思います。

今でこそ日本語でのラップが当たり前に生活の中に溶け込み、アイドルでもラップするしCMでラップを取り入れる企業も増えてきました。とはいえ、当然それをよく思わないラッパーたちもいるというのも当然の事実。彼らにとってHIP HOPと言うのはあくまで文化であって、ブームとして消化してほしくはないわけですからね。リスぺクト無しに踏み荒らされたらムカついて当然なわけです。例えば、いくら経済効果があるからと言っても他所の国から来た観光客にブームだからと言って日本の寺社仏閣が荒らされたらむかつくでしょう?HIP HOP文化と言うのはどうしても社会から逸脱した行為とは切っても切れない縁があるのです。それを逮捕されたからと言ってHIP HOPリスナーでも何でもない外野がSNSでとやかく言うのはいかがなものかと私は思います。

話が脱線しました、すみません。

今回紹介したいのは、90年代ごろまだまだ「日本語でラップなんて笑」とバカにされていた、そんな向かい風の時代にブレずにHIPHOPを磨いてきたクラシックにも是非目を向けてほしいです!

今回はこれからHIPHOPを聴き始める人に、これだけは聴いてほしいというクラシックをアーティストの紹介も軽く交えて書いてみたのでので是非聴いてください!

キングギドラ「平成維新feat.童子-T/UZI」

キングギドラとは、「Zeebra」が率いる日本のヒップホップシーンの中で最も影響力のあるグループ彼ら無しでは日本のHIPHOPシーンは今ほど成長していなかったと言っても過言ではありません。シンプルなビート、わかりやすいスクラッチに固い韻を踏みながら社会や風潮をDISるというハードコアなスタイルでしたが、かなり売れました。

現代HIPHOPの礎と言ってもいい存在です。

数ある名曲の中でも聴いてほしいのが、「平成維新」。

客演に童子-TUZIを迎え、忍者とか侍とかをテーマにしたリリックがめちゃんこかっこいいです。

”黒い雲 雨に落雷

風にさすらい歩く現在のサムライ

韻の刀掴んだらば危ない

近づくなら注意しな扱い”

これは冒頭Zeebraのリリックですが、比喩としても完璧だしライムが美しすぎます。

想像力を掻き立てるような情景描写が個人的にはピカイチのラインです。

MSC「音信不通」

「漢a.k.a.GAMI」率いる新宿拡声器集団こと、MSC。日本のHIPHOPシーンサグラップの第一人者であり、日本の裏社会の事情について過激な表現で人気集めました。

MSCには鉄の掟というものが存在しました。それは非常にシンプルで、HIPHOPの世界では最も重要なこと

それが、「リアルであること」

それが例えアウトローなことであっても、実際に経験したことをラップするというものでした。

実際、メンバーがMCバトル中に「今度お前を見つけたら〇す」という内容をラップしてしまい、漢から「お前、(さっき言ったこと)どうすんの?」と詰められ、やるしかないということになり後日相手を襲撃するというアウトローな行動を起こすほどに徹底していました。

でも、そこまで「リアル」に徹底した結果、HIPHOPというのは音楽業界で唯一社会から逸脱した行為を表現してもいい、唯一無二の器の広い音楽であることを世に知らしめたという点で後発のラッパーに多大な影響を与えました。

そんなMSCですが聴いてほしいのはやはり「音信不通」

”さらさらやるつもりもねぇ 命さながらで貫くゲーム…”

から始まるこのhookはめちゃめちゃ有名です。最初から最後までめちゃくちゃ怖いし。このどんよりとした雰囲気を感じると思いますが、MSCはほとんどの曲がこんな感じです。怖いけど、やっぱかっこいい。

降神「帰り道」

「志人」がかつて「なのるなもない」と組んでいたクルーです。降神はいわゆるストリート系のHIPHOPとは一線を画し、メルヘンでナードな独特な世界観のラップをしていました。また押韻のスキルも他のラッパーたちとは一線を画しています。2人とも持っている世界観はそれぞれ違うんだけれどもワードセンスが卓越しています。また、同時期に活動していたMSCとも交流がありお互いに客演として迎えている楽曲があるのがすごくいいですよね。ジャンルは正反対なのに交わることで生まれる連鎖反応みたいな、日本語ラップ成長期に大きく貢献したグループであったことは間違いないです。

そんな降神ですが、聴いてほしいのは「帰り道」

正確には、「なのるなもないfeat.志人」としてのリリースですが実質降神なのでこの曲です。全体通して、「高校生の夏休み」みたいな雰囲気を終始感じます。

‘’かき氷 夏祭り 日記を書きとり

元気溌剌に遊ばなきゃ 約束は焼きそば屋の前に一人飽きっぽい

”麦わら帽子の子どもたちを 唐辛子色の太陽が包む 秋も遠からじ”

本能的にノスタルジックな感情を刺激されますよね。

グッと曲の世界に入り込める、素敵な楽曲です。

D.O「悪党の詩」

言わずと知れたHIPHOPのボス、「Dangerous Original」ことD.O日本語ラップをお茶の間に届けた第一人者と言っても過言ではないです。というのもバラエティ番組「リンカーン」へ出演し、最強のインパクトを残しB-BOYという存在を世に知らしめるきっかけとなりました。あのオンエアは僕もよく覚えてます。「DISる」という言葉を世間に浸透させたのも間違いなくこの人です。クルー「練マザファッカー」のリーダーであり、かつては「KAMINARI-KAZOKU.(雷家族)」のメンバーでもあった彼は現在「漢a.k.a GAMI」率いる「9SARI GROUP」に所属するなど時代を跨いで活躍するまさにHIPHOPの生きる証人です。

D.Oソロ曲で最も有名な曲と言えば「悪党の詩」です。

クセになる独特なフロー、ギャングを彷彿とさせるトラックがめちゃくちゃかっこいい。何回聴いても、ラップ上手過ぎますよね。彼もまた若い世代のラッパーにも影響を与え彼をリスペクトする「RED EYE」と「悪党の唄Remix」を制作したり積極的に客演で他のラッパーと楽曲制作を行うなど、ラッパーとして永遠にボスの座に君臨し続けることでしょう。

TOKONA-X「知らざぁいって聞かせやShow」

名古屋出身のHIPHOP伝説の男です。やはり名古屋はパンクロックHIPHOPといった音楽の老舗のような街ですね。別名「T-X」「トウカイテイオー」とも呼ばれ、現代のラッパー達に与えた影響力は凄まじいです。残念ながら2004年に26歳で亡くなってしまいましたが、彼が生きていたら今のHIPHOPシーンはもっと進化していたのではないかと思います。声の圧、破壊力はまさにシーンの宝であり、ラッパーになるべくしてなるような存在。またDJ RYOWがビートを作成した「WHO ARE U?」は現役のレジェンド、若手のラッパー達を従えて4度のRemixがされ未だに世代を超えて影響力があることは間違いないです。

本題の「知らざぁいって聞かせやShow」ですが、バトルビートでも多くの試合に使われ若いヘッズ達でも皆知っているのではないでしょうか。DIS曲であるのは確かですが、任侠映画のようなドスの効いた極道っぽいビートに名古屋弁で恐喝するようなリリックがめちゃんこにかっこいいです。

”Pussyよかふやかして 腑抜けにしたる

てめえの周りがおちゃきぃだけだろ別名

芋引きトンズラ ほいで同じバースディ祝っとれ”

「おちゃきぃ」ってどういう意味かよくわからないけどめちゃかっこいいですよね。名古屋弁が羨ましいもんね。俺もこんな言葉を操ってみたかったです。

ANARCHY「FATE」

泣く子も黙るANARCHY。その伝説はHIPHOPの域を超えています。少年時代には暴走族総長へのしあがったり、当時日本で3例しかなかった決闘罪という罪状で逮捕されたり、「KKS」という名前の愚連隊を引き連れ、アーティスト名と同じANARCHYという名前のカラーギャングを束ねるリーダーとなり大規模な不良軍団のリーダーを務めるなどストリートで既に伝説の存在でした。そんなANARCHYはラッパーになってからも伝説的な存在になっています。アンダーグラウンドなラッパーとして異例のavexとの契約映画監督として指揮をとるなど活動の幅広さがまさにKINGですよね。この人は、なるべくしてスターになった人物。

そんなANARCHYですが、聴いてほしいのはやはり「FATE」

自身の過去をリリックにしています。

”下駄箱に置き去りのハイヒール

写真の中笑顔でハイチーズ

家飛び出す前くれたキャンディ

あげたくないけどやるよハンデ

泣き腫らした目睨む一般家庭”

これは、父子家庭で育ったANARCHYの過去のリリックです。お母さんの置き去りにしたハイヒール笑顔の写真、それらがどれだけ心を痛めたでしょう。思い出が脳裏に焼き付いて離れなかったことでしょう。母親に恨みはないけど幸せな家庭が羨ましくて仕方なかったんだと思います。これほどまでに心に刺さったリリックは僕史上ありません。

LAMP EYE「証言」

最後に、証言。これはもうほんとのほんとにクラシックです。Japanese HIPHOPシーンの「We are the world」みたいな曲なんですよ!

メンバーはRINO, YOU THE ROCK☆, G.K.MARYAN, ZEEBRA, TWIGY, GAMA, DEV-LARGE 。(実はZEEBRA以外はKAMINARI-KAZOKUのメンバーだったりします。)

説明はしません。野暮なので。聴けばわかるというやつです。

ここから自分の音源にサンプリングしたラッパーは数知れません。その中でも、韻踏合組合MSC志人が参加した「暴言」2000年代の証言としてスターが参加した作品がありました。こちらもめちゃくちゃかっこいいです。

この文化、続くといいなぁ。2020年代のラップスターたちの証言も聴きたいですよね。

おわり

今回はHIP HOP入門のような記事になりましたがいかがだったでしょうか。

ずっと昔から聴いてる先輩、最近になって聴き始めた若い子たちみんなに楽しんでもらえたら幸いです。今後もHIP HOPに関しても発信していくつもりなのでこうご期待です!

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