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呂布カルマとは?
呂布カルマとは、名古屋を代表するラッパー/MCです。数多くのフリースタイルMCバトル大会で結果を残し、その名は今やHIP HOPアーティストの中でも知名度はピカイチ。
今までの遍歴で言うと、戦極MCBATTLE、KING OF KINGS、凱旋MCbattle、ADRENALINE等々洗練された全国各地の強者共が集まる、群雄割拠の大規模な大会での輝かしい優勝歴があります。
まさに現役最強のMC。
その中でも、私TATSUYA的ベストバウトを少しだけ紹介します。
戦極MC BATTLE第10章 呂布カルマvsNAIKA MC
熱いバトルです。結果的に呂布カルマは負けてしまうのですが、若さゆえの尖りがある呂布カルマのライムがどうしても大好きなバトルなんです。
戦極MC BATTLE第12章 呂布カルマvsENEMY
伝説となったバトルです。呂布カルマのパンチラインの強さを痛感できます。
「これがボクシングならありえねぇ 言葉のウェイトに差がありすぎる」
このバースが今後何年もバトルでつつかれる、呂布カルマの「言葉の重み」というイメージが定着した伝説のバトル。
真 ADRENALINE 呂布カルマvs輪入道
サムネでわかりますよね、バトル史に残る試合でした。
お互いに長いキャリアがあって、実力とバイブスを認め合っているからこそ出てくる言葉に愛を感じました。
世の中のMCバトルが全部こうだったら困るけど、そうじゃないからこそ輝いている試合なんだと思います。
音源での呂布カルマ
次に、アーティストとしての呂布カルマをご紹介。
ラッパーとしての他に、レーベルJET CITY PEOPLE 主催者としての顔も持っています。
このレーベルの名前は、もちろんBLANKEY JET CITYから名付けられました。僕も大好きです。
後述しますが、呂布カルマが持ち合わせているパンク精神にも一目置いているので、この名前を背負ってくれていて感激しております。名古屋はパンクの老舗ですもんね。
さて、本題です。呂布カルマの音源作品には抽象的表現が多く、難解なリリックが特徴的です。
そもそもHIPHOPというのは英語圏で発展した音楽なので、ビートに言葉をのせながらスラスラと流れるように韻を踏みながら発音するラップが主流です。
対して呂布カルマの音楽も、しっかりと固い韻を踏みながらビートにハメるのですがそれ以上に日本語が持つ特有の響きの美しさ、ダブルミーニングなど深い意味を持たせながらより深い表現をしているのが特徴的です。
日本語ラップの歴史にも、スタイルには流行り廃りがありましたが呂布カルマのラップはそういうものに影響を受けない、不変の言霊が宿っている。これはもう間違いないです。
長年アンダーグラウンドシーンで活動している呂布カルマですが、その中でも異端のスタイルであったことが伺えます。
自らの世界を明確に表現できる人の芸術は、美しい。呂布カルマはそれを体現している数少ないHIP HOPアーティストの一人だと断言できるでしょう。
光があるから影があるように、オーバーグラウンドがあるからアンダーグラウンドだって輝ける。脚光と光を浴びた呂布カルマは誰よりも高く飛ぶ。大人のHIP HOPを探している人にオススメできます。
呂布カルマ入門におすすめ!YouTubeで聴けるこの曲を聴け
俺の勝手
MVの再生回数は800万回再生を超え、呂布カルマにとって名刺代わりのような曲です。不気味なトラックに難解なリリック。This Is 呂布カルマと言ったところでしょうか。1つの事象やテーマに沿った曲というより、経験してきたことをリリカルに表現した、呂布カルマというラッパーの人生が垣間見える1曲です。
”フィルムと違って色褪せないはずのデジタルはデータごと飛んだ いつか遊んだ事も忘れて名を尋ねてる はじめまして”
非常に文学的ですよね。皮肉というか、風刺が効いているというか。MCバトルであそこまで切れ味のある即興が出てくるのも、こういった観点で世界を捉えているからなのだと思うと納得ですよね。
イカレテロ
呂布カルマというラッパーの自己紹介のような曲です。前半は自己紹介を、後半は怒涛の押韻でスキルを見せつけます。
”猫背キツネ目オールバックのジェントルメン”
”君のアドバイスは有り難く無視 俺は俺で俺のrapするし 鍛えたテクニック苦肉の策 ドツボにハメる骨肉のrap”
彼が現在のラップスタイルに行き着いた理由、それは気が遠くなるほどの自問自答の中で模索し、たどり着いたものなのでしょう。
HIP HOPというのは己との対話により研ぎ澄まされるもの。彼は生粋のラッパーなのです。
そして極めつけの最後のバース、
”君が笑うならもちんぽも出す 君が怒ってもちんぽ 出す”
このライン、非常にいいですね。長年貫き続け、未だなお健在の傍若無人なスタイルをたった1小節で言語化できています。趣、風情、ここに極まれりといった感じでしょうか。
問答無用 改
DJ鷹の目の攻撃的なビートで異常なほどに韻を踏み、反骨精神に溢れたラップを魅せます。この曲から感じ取れる思想は「HIP HOP」であり、「パンクロック」でもある。
”ズルして磨いた感性 え、ズルしちゃダメってのがわかっちゃ無いね なりふり構ってちゃ勝てないぜ”
このリリックから、リスナーは何を感じるでしょう?
「なりふり構ってちゃ勝てないぜ」というリリックの根底にあるものは、積み重ねてきた数々の悔しさの向こう側を見てきた人が辿り着く「悟り」の様なものなんですね。そのうえで、
”聞いてっか?神様 これが俺のやり方 大人の引いた線をはみ出した ありがたいことに俺の足場が 闇から睨んだ俺の明日は 夢なんかよりずっと確かさ”
この反骨精神。これこそがパンクを感じさせる精神性です。さて、ここまでの解説で、もう一つの疑問も生じました。ここで言う「ズルして磨いた感性」とはどういうことでしょう?いや、ラッパーにそんな問いかけは野暮ですよね。
SO JUICY
マッチしすぎるビートと独特のフローが中毒性満点。まるで夏の夜、外灯に集まる虫たちの世界に迷い込んだかのような気持ちになります。
こちらは「INTER HOOD」というオンライン・ラップバトルに投稿された曲なのですが、ヤバいので紹介です。
”楽しみたいだけ 他意はない”
と言っているように、深い意味は考える必要はありません。まるで言葉が水のように流れるサイファーのように全体を通して日本語の韻が持つ美しさを気持ちよく聴きましょう。
しかし、問題はラストのバースです。
”rap is truth 何にもないなら夜の闇の事を唄おう”
”rap is truth 何にもないなら血の赤い色のことを唄おう”
このラインが出た瞬間、急に緊張感が脳に走ります。深すぎる。呂布カルマは「夜の暗さ、血の赤さ、朝日の眩しさ」を知っている人なんだ。それはもちろん事象としての意味合いではなく、魂レベルで知覚しているということ。それをラップとして言語化できるだけのスキルと教養がある。呂布カルマという男の深淵を覗いてしまったような感覚にさせられるバースだとは思いませんか?
夜行性の夢
美しい。その一言に尽きます。
神秘的なビートも相まってか、日本語本来の持つリズムの美学を改めて考えさせられます。
”夜を舞う女の子たちは蝶 俺達は一生虫取り少年 旺盛な好奇心と引き換えに失った無垢”
脱帽です。韻もミーニングも、ワードセンスの達人の域に達しています。
また、
”大きな麻よりぶっ飛びます”
この「〇麻」と、テーマが夜だから引き出される「朝」がダブルミーニングになっているのもおしゃれですよね。
リリックを紐解く上で重要になってくる、タイトルの夜行性というのはどういうことなのか、少し考えてみましょう。。
hookの
”お前らが寝てる間に遊ぶ
お前らが寝てる間に稼ぐ
お前らが寝てる間ブッ飛ぶ
可能性無限夜行性の夢”
この「寝てる間に…」というのはほんとに寝てる夜中の時間という意味の他に、他のラッパーたちが手を抜いた仕事をしている時間を比喩しているというのは、ヘッズなら一瞬でわかりますよね。こういうダブルミーニングが出来る頭の良さとセンスが呂布カルマの武器だと思います。まさに「可能性無限夜行性の夢」。
真っ青
夏休みの昼下がりへ、旅行したい人におすすめです。僕個人は呂布カルマ史上、この曲が一番好きです。
トラックもなんか心をえぐられるし、ひたすらにリリックが叙情的なんですよね。
”花火大会も ブールも海も 肝試しも 行けないけど 特別な夏になる”
”駅まで自転車で その先は電車で 4つ先の駅で目覚める そんな目で見てんじゃねぇ”
このライン、いいなぁ〜。僕のこの感情を言語化するのは難しいけど、しみじみ思います。
この、感情の揺さぶられる感覚をみんなにも感じてほしいから、是非聴いてください。文字起こしでは伝わらないものがあるんですよ!
呂布カルマは、何を想って唄ったのでしょうか。何が見えていたのでしょうか。気になりますが知らないほうがいいのでしょうね。
おわり
以上、今回は呂布カルマというラッパーについて解説させてもらいました。
近年はSNSで炎上したり、メディア露出があったりなど話題に事欠かない男です。しかし、それも全部呂布カルマにとってはパフォーマンスに過ぎません。彼は大衆に迎合するようなアティチュードで音楽活動していませんから。それは、曲を聴けば明白です。だからあまり、真に受けないように。
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